運動の世話

 人間の生活には、眠りと目覚めのリズムがあるわけですが、これは静と動のリズムというように表現することもできます。

 そして睡眠や安静は、静に関する事柄であったわけですが、運動すなわち静に対する動に関することも、睡眠や安静と同じように人間の生活には大切なことです。

 病状にあわせた運動を
 病気になりたての頃は、静かに寝ていることは苦痛ですが、病気が長引くと、動くと病気が悪化するのではないかと心配になり、動くことが許されても動けなくなるものです。

 特に脳卒中で倒れた場合などは、再発を恐れるあまり、本人も家人も、動かないほうがよいと思い込んでいることがよくあります。しかし、これは病気の回復に取ってよくないことなのです。

 病気の状態にもよりますが、できるだけふだんの生活のリズムをこわさない程度に運動することも大切なのです。

 ただ、疲れすぎるとかえって病気を悪化させてしまいますから、病状に合わせて日課表を作り、それに合わせて運動するとか、細心の注意を払ってすすめて下さい。

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 運動ができなくても気分転換を
 気分転換をはかる工夫は、運動が制限されている場合でも必要です。

 たとえば、病人を中心とした家族だんらんのひと時を設けたり、テレビを一緒に見る時間を持つなどして、とかく病気のことに気を向けがちな病人に楽しい時間をあたえ、周囲の人たちの暖かい心づかいを伝えることによって、病気回復への意欲をかきたてることもできるわけです。

 また、寝床の位置を変えて外を眺められるようにしたり、趣味の時間を持つことも工夫の一つでしょう。

 運動のしかた
 手足の動きが不自由であったり、長く寝ていたために筋肉が弱ってしまっている病人の場合、手足や腰を強くする運動が必要です。このような場合は、毎日徐々に運動の範囲を広げるようにし、あせらず、着実に行うことが何よりも大切です。

 また、たとえば運動が制限されていても、動けるようになったときのことを考え、筋肉が弱り切ってしまわないように、看護者の手で手足を動かす運動(他動運動)をさせたり、寝ているときの姿勢にも注意する必要があります。

 自分の力で運動できるような状態になったら、自分の力で運動(自動運動)し、弱った筋肉の回復をはかるようにします。

 リハビリテーションのしかた
 まひのある場合、あるいは病気の回復期にある場合は、看護者が何でもしてあげることは、必ずしもよいことではありません。

 医師の許可のもとに、病人が自分でできることは自分でするように自ら訓練すること(リハビリテーション)が必要で、看護者はその手助けができなくてはなりません。

 起き上がる
 病人が自分で起き上がりやすいように、ベッドの足もとにひもをつけ、それを手繰りながら起きるようにします。

 イスに座る
 気分転換の意味もあります。ただし、1回の時間が長すぎないようにします。また長く寝ていた人は、起き上がると脳貧血を起こすこともありますから、まず寝床に座らせて少し様子を見てから椅子に移すようにしましょう。

 イスに座るときの介助のしかたは、病人の前に立ち、両手で病人のわきの下をしっかり支えます。イスは、できれば腰をかける部分が深く、ゆったりしてひじかけのあるものを選びましょう。

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 歩く
 病人の体格が小さい場合は、病人の背後からわきの下に左右の手を入れ、上方に吊り上げるようにして支えます。

 病人と介護者がほぼ同じ体格なら、病人の片方の腕を介助者の肩にかけさせ、わきの下に腕を差し入れて腰部を支えます。

 まひがある場合は、まひのある側に立ちます。介助がなくても、つえでひとり歩きができるようになったら、まひ側の手は三角巾で肩からつるし、はきものは、かかとまではいるきちんとしたもの用います。つえは、下にゴムをつけ、滑らないようにします。

 また、上肢の運動範囲を広げていくことも大切です。たとえば、手でくるみを持つ練習、粘土細工、絵を描くことなどの機能回復のための練習や、気分転換の意味も含めて、病人の好みに合った運動を選んであげましょう。