糖尿病の食事療法

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 糖尿病の治療食といえば、一般には、非常に食品制限の多いもののように考えられているようです。

 昔は、糖尿が出ないようにするため、ご飯や砂糖、菓子類はもちろん、くだものも甘味の多いブドウやバナナは避け、調味料にみりんを使ってはいけないといった禁忌が療法であるかのように信じられてきました。

 しかし実際には、糖尿病の治療食として禁じなけらばならない食品はありません。むしろ、かたよった食べ方をしないで、広範な栄養をとるようにしなければいけないのです。しかし、量の取り過ぎは禁物です。

 つまり、食事療法の原則は、生活を営むために必要なカロリーの枠で、栄養のバランスの取れた食事をするということです。

 といって、朝食か昼食を抜いて、その分を夕食でまとめてとるといったやり方はかえってマイナスです。食事は、毎日決まった時間に、決まった量を取ることが大切です。

 ところが、はじめのうちは、この原則を守るのはなかなか難しいものです。2~3ヶ月は食事療法を守って、からだの調子もよくなってきたのに、なにかの機会に食生活を乱し、病気を悪化させる人も少なくありません。

 糖尿病をよくコントロールするためには、正しい食事療法を1日も早く自分のものとすることと、怠りなく定期検査を受けることが必要なのです。

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 必要カロリーを決める
 食事療法を行うにあたって、まず必要なことは、それぞれの患者が、社会生活を営むためには、1日に最低これだけは取らなければならないというカロリー量を出すことです。

 これは主治医に決めてもらいますが、一般的な求め方は、サラリーマンや主婦などの場合は、標準体重1㌔につき約30㌍として計算します。
 身長160㌢の人では、
 {(160-100)×0.9}(標準体重)×30 で、約1600㌍となります。

 必要カロリーが決まれば、次に、80㌍を1単位として、必要カロリーを単位に換算します。1600㌍の人なら20単位ということになります。

 このように単位に換算するのは、私たちがふだん食べている量の食品を調べてみると、80で割り切れるものが非常に多く、カロリーで言い表すよりも、単位で言い表した方が計算しやすいし、わかりやすいからです。

 たとえば、ご飯軽く1杯は2単位、卵中1個は1単位、バナナ中1本、豆腐2分の1丁、塩鮭小1切れも1単位というように、簡単な数字で表されるのです。

 各栄養素をバランスよくとる
 必要カロリー量に合わせて、タンパク質、ミネラル、ビタミン類などをバランスよくとるのですが、これらの栄養素を配分する上で、特に守らなければいけないのは次の三項目です。

① 標準体重1㌔あたり、1~1.5㌘のタンパク質をとる。
② 糖質を100㌘以下にしない。
③ ミネラル、ビタミンはじゅうぶんにとる。

 日本糖尿病学会で作成した「糖尿病治療のための食品交換表」では、食品を栄養別に四つの群、六つの表に分類し、各食品の何グラムが1単位(80㌍)であるかを示してあります。

 この交換表によって1日の持ち単位、つまり、1600㌍必要な人なら20単位を、「表1」(主食などから)何単位、「表2」(くだもの類)から何単位、「表3」(魚、肉、卵、豆腐など)から何単位、「表4」(乳製品など)から何単位、「表5」(脂肪食品)から何単位、「表6」(野菜など)から何単位取ったらよいかを決めます。(主治医が本人の必要カロリーを決め、食品配分は、栄養士がバランス良くするよう心がけて決めます)。

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 基礎食
 食事療法にあたっては、1日の食事で何をどれだけとればよいかの目安をつけておくことが大切です。つまり一定の枠内を出ないように、じょうずに配分することで、これは、建築で言えば間取りの見積もりであり、洋裁なら型紙にあたる基礎指針となるものです。これを食品構成、または食糧構成表作りと云っています。

 日本糖尿病学会では、糖尿病の食事療法の手段として、「基礎食」と呼ぶ1200㌍の食糧構成を組んでいます(下表)。この基礎食食糧構成は、分かりやすい常用量(慣用量)をもとにしてあります。

 ご飯は茶碗1杯、くだもの1個、魚1切れ、豆腐2分の1丁というように、同じ80㌍にそろえた単位で計算し、1200㌍の中に、タンパク質61㌘、脂肪30㌘、糖質157㌘と、じゅうぶんなミネラル、ビタミン類が含まれています。

 これを単位になおすと、「表1」から6単位、「表2」から1単位、「表3」から4単位、「表4」から1.3単位、「表5」から1単位、「表6」から1単位、「付録」(調味料など)から0.7単位。合計すると15単位、1200㌍となります。

 この程度の食事は、どんなに重い糖尿病の人でも必ず食べなければならないので、基礎食というわけです。

 基礎食(1200カロリー)の食糧構成
 分量―1200Cal、タンパク質―61g、脂肪―38g、糖質―157g

  表1 表2 表3 表3 表3 表3
  米飯 くだもの 豆および豆製品 魚介類 肉類 卵類
分量(g) 330 200 140 70 60 50
  ご飯―茶碗軽く3杯
米―カップ1弱
パン―8枚切り4枚
うどん―1と3分の1玉
リンゴ―1個
桃―1個
なし―1個
かき―1個
かき―1個
ミカン―1個
バナナ―1個
プラム―1個
びわ―1個
イチゴ―15~20粒
豆腐―2分の1丁
納豆―2分の1包
焼き豆腐―4分の1枚強
油揚げ―1と2分の1枚
魚切身―1切れ
脂っこい魚―小1切れ
干し魚―30g
イカ、貝―100g
鶏肉、牛肉―各小1切れ
鶏ささみ―2~3本
豚肉―2分の1枚
卵類―1個
うずら卵―5個
  表4 表5 表6 表6 付録
  乳類 油脂類 緑黄野菜 淡色野菜 その他
分量(g) 180 10 100 200  
  牛乳―1本
スミムミルク―大さじ8
油―大さじ1
バター―大さじ1
小松菜―3~5株
ほうれん草―3~5株
三寸ニンジン―1~2本
ピーマン―3個
かぼちゃ
 ―5cm角1切れ
キュウリ―中2本
キャベツ―中2枚
ナス―中3個
ダイコン―中10cm
トマト―小2個
白菜―2枚
小かぶ―6個
カリフラワー
 ―小1個
味噌―
大さじ1弱5g
砂糖―大さじ1弱


 献立の作り方
 基礎食食糧構成表に示された食品群の中から食品を選んで、朝、昼、夕に分けて献立すれば、その日の栄養は過不足なくとれます。しかし、実際には、この基礎食ですむ人はありません。そこで、その人の必要カロリー量と基礎食との差だけのカロリー量を加えなければなりません。

 1例を上げると、次のようになります。

① 1400㌍(17.5単位)の場合は、基礎食のほかにご飯を茶碗に軽く1杯と4分の1。ご飯の代わりにおかずを加えたいときは、魚、肉、卵のいずれかから1単位。
② 1500㌍(18.8単位)の場合は、基礎食のほかにご飯を軽く1杯半と牛乳半本、油小さじ半分。
③ 1800㌍(2.5単位)の場合は、基礎食のほかにご飯2杯半と牛乳半本、油小さじ半分。

 しかし、ご飯を多く食べたい人は、1700㌍までは、ご飯をふつう盛りにして、1色2杯ずつにする程度でもバランスは崩れません。糖尿病患者は、ご飯を多く食べてはいけないのだという古い食事観念のため、これを心配する人もあるようですが、けっしてその心配は要りません。

 なお、食事に変化をつけたいときや、好き嫌いがあるときは、食品交換表の中にある同じ種目のものであれば置き換えて差し支えありません。たとえば、魚が嫌いな人ならば、卵、豆腐、肉の中のいずれかと交換しても良いのですが、これを果物に換えることはできません。

 卵や肉は、魚と同じくタンパク源となる食品ですが、くだものはタンパク質を全く含まないので、必要なタンパク質がとれなくなるからです。

 以上のことを理解して献立表を作成すれば、糖尿病の場合は、使うことを禁じる食品もなく、調理の上で特別な配慮もないのですから、ある意味では、禁忌食品のある疾患の献立作成よりもたやすいといえましょう。

 間食とアルコール
 間食を取った場合は、その分だけ3度の食事を少なくしなければなりません。しかし、間食が多くなると、食事制限を守るのが難しくなりますから、せいぜい1日に1回ぐらいにすることです。

 ただインスリン注射をしている人では、一定の時間に少量の間食を取らないと、低血糖発作を起こす危険があります。

 また、アルコール類は、原則的には、合併症のある人以外は、1日の持ち単位の枠内でなら飲んでもよいことになります。

 しかし、お酒を飲むときは、なにも食べずに飲むと肝臓に悪いし、酔いやすくなりますから、どうしても何かつまみを食べることになって、カロリーがオーバーします。

 なかには、飲んだ分だけご飯を減らすという人がいますが、ビール1本は、ご飯軽く1杯半と同じカロリーですから、帳尻はあいます。

 しかし、ご飯は糖質源となる食品ですが、アルコール類は糖質源となる食品には含まれていません。ということは、お互いに交換できない食品ということになります。したがって、アルコール類は飲まない方が無難といえるでしょう。

 食品の選び方
 献立を作る場合、食品の選び方は、

① 食品交換表をよく調べ、その特殊な分類のしかたを理解し、実際にあたっての食品の量を知っておく。
② 食品の持っている個性的な栄養価値をじゅうぶんにわきまえて、献立に変化をつける工夫をする。
③ 食事のかさを配慮する。制限されたカロリーの中で、計算的にあっていても、患者の感じとして感服感が得られなければ不都合となる。
④ 油の使い方をくふうする。

 などを眼目として考え、広い範囲の食品の中から献立材料を選ぶように心がけたいものです。