食道がん

 食道がんは、食道の内腔をおおう粘膜から発生したがん細胞によっておかされる病気で、他のがんと同様に、発生した場所を中心に限りなく大きくなります。またそこから離れた他の場所へも転移を起こし、ほうっておけば比較的短期間に必ず不幸な結果を招く病気です。

 また、胸の中にあって、まわりに心臓、器官、肺、大血管などが囲んでいる食道のがんは医学が進歩した今日でも、どのがんよりも厄介なもののひとつです。

 食道がんは胸部食道にできやすく、その中でも中央のやや下の部分によく発生します。

 次いで多いのが腹部食道で、ここには胃の入り口付近にできた噴門がんが浸潤してくる場合も多いので、本来の腹部食道がんとあわせて、下部食道噴門がんと総称しています。頚部食道がんは比較的珍しいものです。

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 原因
 他のがんと同様に、食道がんもはっきりした原因はまだ分かっていませんが、統計的にみて、かかりやすい要素や誘因が考えられており、いくつかの条件が重なってはじめて発生するのではないかと想像されています。

 たとえば、「遺伝的体質」+「組織の老化」+「反復する刺激か、なおりにくい傷」+「現在未知の動機」といった一連の積み重なりです。

 これを食道がんに当てはめてみると、まず、親兄弟にがんが多い人は、そうでない人よりかかる危険性が多く、つまり体質が遺伝するといえます。

 次に「組織の老化」という点では、食道がんにかかる人は高齢者が多く、胃がんは45~55歳にかかりやすいのに、食道がんでは55歳以上に多いということです。

 55歳を過ぎると組織は急激に老化するので、食道がんの発生とことに関係が深いといえるでしょう。

 「反復する刺激」ということでよく言われるのは、強い酒、熱い飲食物を長年好んで取り続けた人が危ないということです。以上の要素にもう一つ現在未知の、ある原因が発がんの引き金を引くと、食道がんが発生すると考えられます。

 しかし、周りにがんの気のない、比較的若い、酒も飲まないような人でも結構食道がんにかかっています。したがって危険性の多い人は、より注意しなければなりませんが、そうでない人も安心という先入観を持ってはなりません。

 症状
 発がんの初期には自覚症状は全くありません。これが食道の半周以上に発育してくると、敏感な人なら、ちょっとおかしいと気づくことがあります。

 つまり、食道は一種の筋肉の管で、食物を飲みこむと膨らむのですが、がんが進んでくるとこのふくらみが悪くなるので、飲みこんだ食道の途中でこすれたり、さわったり、しみたりする通過感を感じます。

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 通過障害
 敏感な人がやっと感じる程度の症状がさらに進んでくると、がんは食道の内腔に突き出して、これをふさいでしまうので、本格的に食物の通過障害があらわれてきます。軽いうちは、ご飯や肉を食べると、途中でいったん引っかかるといった程度です。

 しかし、しだいにその程度がひどくなり、食べたものが途中で止まって、あとから水でも飲まないと、降りて行かないようになります。これも始めはときどきだったのが、そのうちに飲みこむたびに必ずつかえます。

 また、はじめは固形物だけがつかえたのが、そのうちに流動食もつかえ、水までも通らなくなってしまいます。

 しかし、盛り上がったがんが、時には腐って崩れ落ち、一次的に通りがよくなることもありますが、いずれは元に戻ってしまいます。

 注意しなければならないのは、通過障害というものは、必ずものを飲みこむときに起こることです。飲みこむときはすらっと通るが、ふだん何も食べていないときに、何か食道につかえた感じがするというのは、たいてい神経的なもので、がんではありません。

 痛みと異常感
 通過障害と同時にいろいろの形で痛みの起こる場合があります。がんの部分を食物が通過するとき、胸骨の後ろとか、背中がジーンと痛んだり、胸の奥底にいつも鈍痛があったりします。

 そのほか重圧感、異物感、不快感など、言葉では表しにくいような異常感を訴えます。

 全身衰弱
 全身的には食物が通らないために栄養失調で、みるみるやせ細り、これにがん自体の毒素や出血の影響が加わり、衰弱が早まります。こうなると悪液質といって、がん特有の死相があらわれてきます。

 せき、たん、発熱
 がんが直接、気管支に破れて食道気管支ろうとなったり、頸部への転移のため、神経がまひし、食道の内容物を肺に吸い込んだりして、ひどいせきやたんが出て、発熱も起こります。

 このほかがんが転移した場所によっていろいろと特有の症状が加わります。