心筋梗塞

 高齢者の場合の特徴
 冠動脈閉塞例の約70%、冠動脈血栓の75%に心筋梗塞があらわれます。高齢者では約10%に心筋梗塞がみられます。

 男子では年齢とともに増加しますが、女子では年齢による差は明らかではありません。心筋梗塞は年代的には60歳代、50歳代、70歳代の順に多くみられます。

 解剖の結果では、60歳代以上の高齢者では新鮮な心筋梗塞は約20%、陳旧性梗塞(発病後かなり時間が経過したもの)は約60%、両者の合併は22%に認められます。

 狭心症発作の頻発に注意
 狭心症の発作が頻回に起こってくる場合は、50%以上の例で心筋梗塞が発症する可能性がありますが、狭心症の発作が減っている傾向にある場合でも、約40%に心筋梗塞が起こる可能性があって、油断できません。

 1年以内から狭心症の発作が増えてきている場合の4分の3に心筋梗塞を見ることがありますから、この点をよく留意します。

 症状
 非定型的な症状を示す
 高齢者の心筋梗塞では、非定型的な症状を示すこと、また無症状の場合もあることが特徴です。(その病気に決まって起こる症状を定型症状という。たとえば虫垂炎の場合の腹痛。しかし非定型症状とはそういう決まった症状がない)

 胸痛などの痛みを訴える例は約半数に過ぎず、30%では非定型的な症状、または無症状であったとの報告があります。

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 無症状の場合も
 心筋梗塞例を対象として、発作に際して痛みを訴えなかった例を年代別にみると、60歳代で20%、70歳代で52%、80歳以上50%と、年代の進むにつれて疼痛を訴えない例が多くなる傾向があります。

 疼痛がなく、心窩部の絞扼(しばられる)感、悪心、嘔吐など胃腸障害を思わせる症状を起こすものが30%、呼吸困難は40%にみられ、その他、立ちくらみ、めまいなどがあり、10%内外には便意、意識障害、ショック症状、左下肢の脱力などがあらわれています。

 急性不全の代償作用
 高齢者に非定型的な症状の多いのは、一種の代償作用とも考えられます。これは心筋梗塞によって急性の心不全(左室の不全)が起こり、心臓から拍出される血液量が減り、脳の循環血量が少なくなるのが原因です。

 時には突然の意識障害が初発症状となったり、また脳梗塞で発症することもあります。

 心臓からの拍出量が減るため、腹部臓器の循環不全から腹部膨満感、下痢などが起こることもあります。高齢者の心筋梗塞では心電図が心筋梗塞の所見を示さない例が約20%にも達します。

 以上、高齢者の非定形的症状を示す例、無症状が多いため、肋間神経痛、上腕神経痛、急性胃炎などと誤診されやすいものです。

 心筋梗塞と特にまぎらわしいものに、高齢者に特有といえる解離性大動脈瘤があり、これは胸痛で急激に発病します。

 予後
 心筋梗塞の予後はよくない
 たとえば心筋梗塞で入院した当日に生き残れる例は、若年者で約3分の1の成績があります。老年者では約4分の1の成績があります。

 急性心筋梗塞の死亡率は60~69歳で33%、70~79歳で47%、80歳以上で64%と加齢とともに死亡率は明らかに上昇します。

 また定型的な症状を示した例に比較して非定形的症状を示した例では死亡率は低いのです。ただ心筋梗塞例の生存者数を心筋梗塞のない同年代の例に比較した場合、死亡の危険率は若年者が高齢者より大であること、いいかえれば、心筋梗塞の生存年数に対する期待は、若年者が高齢者より悪いとされています。

 70歳以上に再発が多い
 再発は70歳以上の例に多く、70歳未満の場合の20%に対して40%と2倍多くなっています。

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