脳腫瘍

 高齢者では比較的まれですが、転移性脳腫瘍を含めると、約1~2%に見られます。転移性脳腫瘍は肺がんによるものが圧倒的に多く、50~60%を占めます。高齢者では青壮年者にみられるように頭蓋内の圧の亢進による症状、すなわち頭痛、嘔吐、眼底のうっ血乳頭などは少ないものです。

 これは脳委縮、脳室拡大があり、少々の脳脊髄圧の上昇は吸収された形となるためです。

 また精神症状、特に痴呆化が出現しやすいことが特徴で、約半数に痴呆化を見ることがあります。また一過性脳虚血発作の症状を繰り返したり、脳梗塞様の症状を示しやすいことから、半数以上は脳血管障害と診断されているほどです。

 また時には全く無症状のこともあります。したがって高齢者の脳腫瘍はその診断は難しいと言えましょう。転移性の脳腫瘍が約半数を占めることから、手術による治療も不可能なことが多く、治療は困難なことが多いものです。

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 脳腫瘍は、頭蓋内に腫瘍のできる病気です。決してまれな病気ではなく、1年に2000~4000例ぐらいの脳腫瘍の手術が行われていると思います。

 脳は、神経細胞と膠細胞の二種類の細胞で構成されていますが、脳腫瘍はこの膠細胞から生ずるものが多く、脳腫瘍全体の40~45%を占め、神経細胞から生ずるものはきわめてまれです。

 残りの50%以上は、脳膜、下垂体、あるいは脳から出る神経などから生ずるもの、また、先天性のもの、血管性のものなどです。全体としてその種類は多く、良性もものから悪性のものまで20種類ぐらいあります。

 発病年齢は、腫瘍の種類によって特色があり、小児だけにみられるもの、反対に成人だけにみられるものなどがあります。全体としては、40~50歳に最高のピークがあり、高齢になるにしたがって減少し、80歳代ではほとんど見られません。

 年少者では10歳以下と15歳ぐらいにピークがあります。したがって脳腫瘍はいかなる年齢層にもみられることになります。性別では、男性に多いという特殊なものもありますが、全体としては、男女の差はありません。

 症状
 脳腫瘍の症状は、発生部位による特徴がありますが、総じて進行性です。

 頭痛
 最も多い症状で、脳腫瘍全体の約90%にみられます。この頭痛には軽いものから一時的なもの、持続的なもの、あるいは発作性のものなどいろいろありますが、ことにがんこな頭痛に、吐き気、嘔吐を伴うものにはじゅうぶん注意が必要です。

 頭痛を訴える場所は必ずしも腫瘍のある場所と一致せず、頭全体に訴えるもの、目の奥の方に訴えるもの、前頭部、あるいは後頭から頸部や側頭部に訴えるものなどいろいろです。

 吐き気と嘔吐
 頭痛に関して起こることが多く、だいたい頭痛が起こると同時に吐き気が起こり、それが激しくなると嘔吐を起こすという場合が多いものです。しかし、小児では吐き気が少なくいきなり嘔吐する場合があります。

 小児の場合は、訴えがはっきりしないので、嘔吐があるとすぐに胃の病気を考えがちですが、脳腫瘍の可能性のあることも常に考えておかなければなりません。

 特に朝起きて、いきなり激しい嘔吐をし(頭痛を伴う場合と、伴わない場合がある)、あとはけろりとして食事をとるなどは、脳腫瘍の可能性が非常に高いものです。

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 目の症状
 目がかすむ、物が二重に見える、視野の両側が欠けて真ん中しか見えない、視野の右側、あるいは左側が欠けて片側しか見えないなどの症状があらわれます。また眼球の動きが悪くなるとか、眼球が早いリズムで自発的に左右、時には上下に動くこともあります(眼球振盪)。

 とくに目の症状で注意しなければならないのは、視力が著しく低下したあとでは、せっかく脳の手術が成功しても、必ずしも視力が回復せず、またまれにそれを契機にして失明することもあるので、早期に専門医に診断してもらうことが大切です。

 片まひ
 脳卒中などに寄らない、徐々に進行してくる片まひも注意を要する症状です。この症状は、腕あるいは脚から始まり、進行してくるとともに顔面にまで及ぶことが多いものです。

 まひは躯幹に近い方が軽く、末端に行くほど重くなるのがふつうです。たとえば、腕の場合では、肩やひじは比較的動かせるが、手関節や指がうまく動かせなくなったり、脚の場合では、股関節や膝関節の運動は比較的よくできるのに、足関節やかかとの動きが悪くなったりします。

 運動の障害
 歩行で不安定でよろけ、手の運動調節がうまくできなくなり、字がよく書けなかったり、物をつかむとき動揺したり、震えたりします。

 また会話がスムーズにいかなくなり、腕や脚の筋肉が柔らかくなるなどの症状は、小脳の腫瘍の場合に起こります。

 聴力障害とめまい
 耳の病気によらない片耳の難聴、耳鳴り、片側顔面のまひ、感覚のにぶり、めまいなどは聴神経にできた腫瘍の特色です。

 てんかん発作
 この症状も脳腫瘍の重要な症状の一つであり、からだのある決まった部位から始まるとか、いずれか片方の半身に起こるとか、あるいはいきなり全身にけいれんの起こる場合があります。

 また発作を繰り返すとしだいにまひが残るようになるとか、発作のあとしばらくの間まひが残るというようなことが起こりがちになります。ことに30歳以後に初めて起こったてんかん発作は、脳腫瘍の疑いがありますから注意しなければなりません。

 また精神症状を主とした発作、すなわち突然、意識状態や態度が変わり、周囲をきょろきょろ見渡したり、無意識に歩き回る、ものにさわる、服のボタンをはずしてみたり、口をもぐもぐさせ、ぴちゃぴちゃ舌を鳴らすなどの動作をします。

 また視覚や聴覚の錯覚や、感情の異常などが起こり、嗅覚の錯覚も起こることがあります。このような発作は、側頭葉腫瘍と関係があります。