脳卒中(脳出血、脳梗塞)

 高齢者の場合の特徴
 脳血栓が多い
 高齢者に最も多い病気です。脳卒中の中でも高齢者では50歳以下の壮年者に比較して脳出血が少なく、脳梗塞(脳梗塞には脳血栓と脳栓塞があり、ここでは脳血栓をさす)が多く、高年になるにしたがってこの傾向が大きくなります。

 これは脳梗塞の原因が脳の動脈硬化によることから、理解のできることです。

 統計によると、脳出血例1437名中50~59歳は29.3%、60~69歳は24.8%、40~49歳は21.3%、70~79歳は13.7%、80~89歳6.22%と出血は60歳未満に多くみられます。

 しかし、脳梗塞(脳血栓)例1248名では60~69歳が34%、70~79歳が29.4%、50~59歳が18.8%、80歳以上が0.94%と、梗塞は60~70歳代が64%ほどを占めています。

 脳塞栓は心臓弁膜症を持った青壮年者、心房細動を持った老年者などに起こりますが、前者により多くみられます。

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 症状のあらわれ方
 脳卒中のいろいろな症状は、主として病変の起こった脳の部位によってあらわれ方が異なりますが、年齢差はなく、病状の見通しは69歳以下の群に比較してはるかに悪いといえます。

 まず脳出血の再発についていえば、年齢が65歳以上、最小血圧110以上、心電図に変化の出るものに起こりやすいのです。

 また脳卒中の病状の見通しでは、卒中発作後1年以内に不幸な結果を招く頻度は、60歳代で18%、70~74歳で32%、75~79歳で46%、80歳以上で80%です。

 また卒中発作後、5年生存率は60歳代で43%、70歳代前半で27%、70歳代後半で17%、80歳以上で4%と、加齢とともに死亡率は急速に増加し、いっぽう5年生存率は低下します。年齢は脳卒中の病状の見通しに大きい役割をなしているといえます。

 これは、高年になると脳に病変の起こった際、近辺の血管に起こる側副血行(バイパス)や、ほかの動脈にも老化が起こってきているため、働きが不十分となること、さらに高齢者では脳以外のいろいろな臓器にも障害が起こっていることなどが関係しています。

 運動障害と病状の見通し
 高齢者では意欲の低下、下肢筋力の全般的な低下、膝関節などの病気から運動練習の効果は少なく、若年者に比べて改善の度合いは小さいものです。

 特に比較的長期間臥床した場合は、起立、歩行の障害は壮年者に比較してはるかに強いものです。

 日常の生活動作(起きる、寝る、食事、排泄などのことでADLといわれる)の病状の見通しを決める因子として、年齢は重要なものであり、60歳未満では74%によい病状の見通しが得られるのに対して、60歳以上では29%とその改善の病状の見通しは2分の1以下で、年齢とADLの改善とは逆比例するとも言われています。

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 ADLの改善
 ADLの改善をはかるためには、卒中発作後、できる限り早期から座位、起立、歩行などにはじまるリハビリテーションを行うことが望まれます。

 しかし高齢者では心臓の病気などを合併することが多いため、思うようにならないことも運動機能の回復を妨害する因子となっています。

 ふだんから、できれば若い時期から運動を行い、特に歩行などで足腰を鍛えておくことが必要で、若い時期に下肢を鍛えた人は運動改善は良く、運動の効果は脳卒中に際して特に確実に発揮されます。

 屈曲性対まひの出現
 脳卒中で寝たきりとなった場合、まひ側だけでなく、正常側の下肢も膝関節で曲がったままとなる屈曲性対まひという状態の起こることがありますが、これは圧倒的に老人に起こりやすいものです。

 屈曲性対まひの原因には、片まひのほかに痴呆、変形性脊椎症、大腿骨骨折、膝関節炎、失禁、床ずれなどがかなりの影響を与えます。

 高齢者では意欲の低下のほかに、床ずれがあらわれることは、運動機能改善の妨害となるため、同じ体位で臥床することは、できるだけ避けなければなりません。