寝たきり老人

 病床にある高齢者の療養、看護で大切なことは寝たきりになるのを防ぐことです。病気の種類にもよりますが、寝たきりの状態が高齢者の寿命を縮め、植物人間に近づけて家族を悲しめるものですが、これは、経験のない人には想像できないものといえます。

 原因となる病気
 寝たきりがいかに高齢者の生命を脅かすものかを、病院の研究成績をもとに述べますと次のようになります。対象は平均80歳の老人です。

 明らかな意識障害がなく、少なくとも3ヶ月以上、寝たきりになった例の病状の見通しを見ると、36%は6ヶ月以内、51%は1年以内、86%は2年以内に不幸な結果を招いています。

 寝たきりとなった原因は、片まひ、不全片まひが最も多く38%を占め、ついで痴呆と屈曲性対まひの37.2%です。屈曲性対まひとは両側の下肢が膝関節で曲がった状態に固定したものです。次いで大腿骨骨折、変形性脊椎症です。

 60~70歳代で寝たきりと関係の深いものは片まひ、不全片まひであり、80歳以上では痴呆との関連が最も大きいものです。

 したがって寝たきりを防ぐ一つの方法としては、片まひ、不全片まひの例では、じゅうぶんな運動練習を主とするリハビリテーションを行うことです。

 高齢者の寝たきり状態の重大な原因が痴呆です。これは痴呆化したため適切な指導にしたがうことができず、安易な姿勢、安易な生活態度を取りやすくなって寝たきりの原因となります。

 いっぽう寝たきりになると、外部の刺激から隔離された形となり、また知的活動から遠ざかるため、痴呆化がますます強められてきます。

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 看護の要点
 寝たきりのの原因となり、また結果とのなる事柄を知り、看護上の参考にして下さい。

 褥瘡
 長期臥床による圧迫のためだけでなく、脳卒中の急性期には比較的急速にあらわれます。一般には一定の部位を長い間圧迫することが原因ですが、動かない状態の持続のほかに栄養不良、肥満、貧血なども原因となります。

 褥瘡の最も起こりやすい場所はかかと、殿部、坐骨部など骨の飛び出しているところです。

 症状
 褥瘡は骨と布団などとの間で長い間圧迫が続くと、循環障害が起こり発生するものです。進むと潰瘍になります。皮膚の表面よりも皮膚の深部にできて皮膚が破れ、大きい潰瘍になることもあります。

 皮膚組織は壊死状態となり、感染も起こしますが、高熱が出たり敗血症を起こすこと、また安静時に疼痛を訴えることは、潰瘍が重いわりには少ないものです。

 褥瘡は就床数日のうちにあらわれるため、毎日背部や殿部を見ることが必要です。一度褥瘡ができると起き上がらない限り治癒は困難なものですから、まず予防することが大切です。

 予防
 一定の部位を長い時間圧迫しないようにすることです。絶えず左または右の体位を交替に取らせます。理想的には、たとえば脳卒中のごく初期、意識障害のある場合でも1~3時間ごとに体位を交替することが必要です。

 また皮膚を清潔にし、じゅうぶんに乾燥させておくことが必要で、アルコールで拭いたり、タルクをふりかけ、さらにマッサージなどで循環障害を防ぐようにします。座布団や空気枕を骨の部分にあてて、強い圧迫をさけることも大切です。

 低たんぱく血症など全身の栄養障害があると、褥瘡を促進させます。食欲が旺盛になると褥瘡も急速によくなっていくことがしばしばみられます。

 拘縮
 運動をしない状態が続いた場合、上肢では肘関節などを中心に上肢、下肢が屈曲した状態に固定し、伸ばすことができないことになります。これが拘縮です。

 患者は痛みのない最も楽な位置に四肢をおくため、拘縮はますます強くなります。下肢に起こると寝たきりの原因となります。

 片まひのある場合、まひ側の下肢だけではなく健康な側の下肢にも拘縮が起こります。特に肘関節に起こりやすいものです。このとき股関節にも拘縮が起こり、これが屈曲性対まひといわれるものです。

 患者の協力が得られる場合は、臥位のまま絶えず膝関節で伸展、屈曲を繰り返させることです。協力が得られない場合は、家族や看護者が絶えず関節部で伸展、屈曲を繰り返すことです。特に伸展を繰り返すことが大切です。

 屈曲性対まひの原因としては、まひのほかに失禁、膝関節炎、痴呆などがあります。逆に屈曲性対まひが原因となって失禁、痴呆があらわれたり、これが強くなったりします。

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 尿失禁
 老人病院入院中の患者約3分の2に失禁があり、特に脳卒中患者では発作直後から失禁の起こるのがふつうです。尿失禁のないうちは家族の看護が期待できますが、失禁があらわれるとともに入院を必要とすることが多いものです。

 いっぽう早期に入院することにより失禁の起こるのを防ぎ、さらに永続的に失禁を防ぐこともできる場合が少なくありません。注意深い看護ができず放置されたりすると、失禁が起こりやすくなります。

 原因
 尿路感染(膀胱炎)が失禁を起こしたり、逆に失禁が尿路感染も起こすことになりますが、前者の場合は医師の指示のもとに尿路感染がなおると、失禁も消失することが多いものです。

 夜間だけに失禁する例もあり、面倒がらずに処置することが望ましく、ベッドの側に便器を置くとか、また排尿感のある場合は、教えさせて便器の使用を試みます。

 寝たきり状態は失禁と密接な関係にあるので、寝たきりを防ぐことがきわめて大切です。

 処置
 わずらわしいものではありますが、次のようなことを守ってほしいものです。

 まず日中の失禁の頻度を調べ、一定した時間に失禁があるならその時期に便器を与えるようにします。もし朝目覚める少し前におむつが濡れるようであれば、この時間の少し前に起こして便器を使わせるようにします。

 この方法は看護者に取って骨の折れることですが、最終的には効果が大きいものです。

 患者への態度
 一般の患者にも共通することですが、ことに高齢者では孤独や遠慮、またひがみなどが強くなります。看護で最も大切なことは、心暖かく、やさしい家族や看護者の接し方であることを常に念頭において高齢者を力づけてほしいと思います。