心臓・血管系の変化

 冠動脈の硬化
 心臓では筋肉、すなわち心筋細胞の大きさが縮小し、心筋の収縮力が弱まり、心臓から血液を送り出す量が減少してきます。

 最も基本的といえる変化は、心臓を養っている冠動脈の動脈硬化です。粥状物質が内壁に沈着し内腔が狭くなり、それが進むと閉塞が起こります。

 心臓を養う血液(酸素)の需要と供給のバランスが破れると狭心症が起こりやすく、また冠動脈が閉塞すると心筋は壊死におちいり心筋梗塞となります。

 冠動脈の効果にも個人差はありますが、高齢者では程度の差はあってもほとんどの場合でてきます。

 80%以上にみられる
 解剖して見ると、高齢者の80%以上に冠動脈の硬化がみられます。

 冠動脈の硬化には性差があって、60歳以下では女子に比べて男子に多いのですが、60歳を超えると差はなくなり、70歳以上では女子の方が著明となりますが、これは月経のある間は血管を広げる作用のある卵胞ホルモンが働いて、動脈硬化をおさえているためと考えられています。

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 冠動脈硬化を促進する要因
 冠動脈の硬化を促す最も重要なものは高血圧であって、また血液中の脂肪分(コレステロール)の異常に多いことも密接な関係があります。

 冠動脈の硬化は他の動脈、すなわち脳動脈、大動脈、腎動脈の硬化を伴って起こりますが、人によってはそうでないこともあります。

 冠動脈硬化の進み方は脳の動脈硬化に比較して血圧との関係がより密接なものです。冠動脈硬化による循環障害から、心臓を収縮させる刺激伝導路(心筋内を走っている)がおかされるため、心臓の収縮拡張のリズムが乱れることが少なくありません。

 このため心臓のポンプとしての能率を低め心臓の予備能力を少なくすることになります。収縮能力のリズムの乱れから、脈は不規則となり不整脈といわれます。

 不整脈→心不全
 脈が不規則なものは絶対性不整脈(心房細動)で、高齢者では他に特別の心臓の病気がないにもかかわらず、しばしばみられるものです。心臓の収縮拡張力の低下は心不全になりやすい状態です。

 心不全とは、心臓が必要な血液を送り出すことに支障をきたした状態です。高血圧が長く続くと心筋は肥大し、それに対抗して強い収縮をしますが、長く続くわけではなく、ついにはくたびれて心不全を起こします。

 心不全の原因は、若年者では心臓弁膜症が最も多いのですが、高齢者では高血圧以外でも、ちょっとしたことによって起こりやすくなります。すなわちからだの水分の少ない状態(脱水)、高熱、肺炎など心臓以外の病的な状態によっても起こります。

 また高齢者では次の述べるように肺にも変化が起こってくるために心不全が起こりやすくなっています。

 新しい酸素を取り入れ炭酸ガスを放出するため、心臓は肺に血液を送り出していますが、肺の老化現象(肺気腫、肺の動脈の硬化)のため抵抗が大きくなり、心臓に負担が加わることも心不全を起こしやすい素地となります。

 心不全の症状としては息切れ、動悸、呼吸困難などがあります。初期は階段の昇降などからだを動かしたときだけに出てきますが、のちには安静時にも症状が出てくるようになります。

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 血管に起こる変化
 血管の変化としては、末梢の血管の抵抗が大きくなりますが、これには交感神経系の緊張増加、副交感神経系の緊張低下もかかわっています。最も著しい変化は動脈硬化です。

 老化とは一言でいえば血管(動脈)の老化といえます。動脈硬化は30歳ごろから、徐々に始まってきますが、硬化による症状はふつう40歳代になって出てきます。

 動脈硬化
 原因についてはいろいろな説があり、一説で全部を説明することはできませんが、コレステロールを中心とした脂肪分である粥状物質といわれるものが、動脈の内壁に沈着するためであることは間違いないところであり、これを促す二大要素は高血圧と血液中の脂肪分です。

 高血圧と動脈硬化とは、たがいに増強しあい、どちらが真の原因かは簡単には決められません。

 動脈硬化のあらわれ方は環境、食生活に左右されますが、遺伝的な因子、人種的な要因もあり、個人差も少なくありません。

 原因となる病気では糖尿病があり、適切な治療を行わない場合は、動脈硬化を促進させます。脳についていえば、糖尿病によって比較的細い動脈の硬化が促されることが観察されています。

 また、動脈硬化のあらわれ方や程度には、臓器によって多少相違がありますが、大動脈の硬化は、高齢者においてはまぬがれるのはわずかです。大動脈から分れた総腸骨動脈ではまず100%にかなりの動脈硬化が出てきます。

 大動脈の硬化と最もよく並行して出てくる動脈硬化は、冠動脈の硬化であり、次に脳の動脈の硬化です。腎臓の動脈硬化と冠動脈硬化との関係は密ではありません。

 動脈硬化により障害を起こしやすい臓器は心臓、脳、腎臓ですが、これらの臓器には動脈硬化が起こりやすく、老人病の多くは動脈硬化によるものです。

 血圧の変化
 高齢者の末梢血管の抵抗が増すことは血圧を高めることになり、動脈硬化が進むとともに血圧も上昇してきます。高血圧は多くの老人病の原因となります。

 心不全を例にとると、最大血圧160以下の群で0%、160前後を動揺する群で6.1%、160~200の群で6.9%、200中心の群で9.1%と高血圧の程度が大きくなるにつれて心不全があらわれやすくなってきます。

 高齢者の脳、心臓の病気の最大の原因である高血圧を降圧剤、食事療法、生活様式などで調整できるということは、老人病予防上きわめて意義深いことです。

 四肢の動脈硬化によって起こる症状は高齢者と若年者との間に特に差はなく、手足の冷えやしびれなどの知覚障害です。