肝硬変

 肝臓にはいろいろな原因で、その組織に壊死や再生、あるいは線維化などの病変が積み重なって、正常な肝小葉の構造とは異なる状態になったり、線維が増加してたがいに連続し、新しい肝小葉のようなものができ上がって、障害があらわれます。

 このような改築や偽小葉が肝臓の大部分にできた状態を肝硬変といいます。肝硬変になると、肝臓は一般にかたく小さくなり、重量も減少します。この肝硬変からあらわれる病気が肝硬変症です。

 原因
 肝硬変を起こす原因はたくさんありますが、特に問題となるのはウイルス性肝炎とアルコール多飲による場合です。

 わが国の肝炎は大部分がウイルス性肝炎によるものと考えられ、このような肝硬変は壊死後性肝硬変、または肝炎後肝硬変と呼ばれています。

 大酒家はよく肝硬変になりやすいといわれますが、これはアルコールそのものが悪いことのほかに、酒だけ飲んでつまみを食べない、特にたんぱく質を取らないための栄養障害が影響しています。

 このようなアルコール性肝硬変は、たんぱく質、ことに脂肪を処理するアミノ酸の欠乏で脂肪肝が生じ、これが基盤になってできるので脂肪性肝硬変、または栄養性肝硬変とも呼ばれています。

 このほか肝硬変には、心臓病や下大静脈、肝静脈の通過障害のために肝臓に血液がたまって起こる心臓性肝硬変、胆汁がたまって生ずる胆汁性肝硬変、日本住血吸虫や肝臓ジストマによる寄生虫肝硬変などがあります。

 また、特殊なものとして、肝臓に鉄が沈着するヘモクロマトーシスや、銅が肝臓とともに脳にも沈着して、肝硬変と脳症状を起こすウイルソン病などがあります。

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 罹患傾向
 アルコール性肝硬変はわが国では少ないとされていますが、アメリカでは非常に多くなっています。ウイルス性肝炎によるものが80%に対して、アルコール性は20%ぐらいです。

 これがアメリカでは、ウイルス性肝炎によるもの58%に対し、アルコール性42%という統計が出ています。

 症状
 肝硬変症の症状としては肝細胞の働きが障害されて起こるものとして、手掌紅斑(手の親指や、小指の付け根のふくらんだ部分が斑点状に赤くなる)、くも状血管腫(腕、くび、肩あたりにみられる、小さなくものような血管拡張)、女性乳房(男性なのに乳房がふくらんでくる)などがあります。

 これらの症状は女性ホルモンのエストロジェンが肝臓で壊されないで血液中に増加するために起こる症状です。また肝臓がかたくなって血液の流れが悪くなるために、その上流の門脈に血液がたまり、門脈圧が亢進します。

 この門脈圧亢進症のために、脾腫(脾臓がはれて大きくなる)、腹壁静脈拡張(へそを中心にして、上下に分かれる)、食道静脈りゅう(食道を流れる静脈が拡張し、破れて血を吐いたり、黒色の便を排泄することが多い)、痔出血などがみられます。

 また肝臓の組織が壊されて黄だんがあらわれることもありますが、一般に肝硬変で見られる黄だんは軽いものです。

 このほか肝硬変では、肝細胞の障害のために血清たんぱく質が変化し、特にアルプミンの減少とホルモンの異常、および門脈亢進症のために腹水(腹腔内に水がたまる)があらわれることが多く、ひどい場合には腹部が蛙の腹のように大きくなります。

 いっぽう、腸から吸収された分解産物、ことにアンモニアが肝臓で処理できずに、門脈から全身の静脈に直接流れ込んで、血液中のアンモニアが上昇して意識障害を起こし、ついには、意識がなくなってしまいます。(肝性昏睡)

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 経過
 以上のような症状は、肝硬変症の典型的なものですが、このような症状があらわれなくても肝硬変がないとはいえません。とくに初期には、はっきりした症状がなく、ただなんとなく疲れやすいとか、食欲がないなどで気づくことも少なくありません。

 しかしこのような初期、あるいは無症状の時期に診断がつくことが多いので、この時期に対策を立てるべきで、腹水、消化管の出血、昏睡などが起きてから治療をするよりも、はるかにその後の経過がよく、肝硬変症という診断がついてから20年以上も、特にこれという障害も起こさずに働いている人もいます。