胃がん

 胃がんは、胃の内面をおおっている粘膜の細胞ががん細胞に変化して起こる病気です。

 がん細胞が粘膜にとどまっているものを粘膜がん、粘膜の下層に進んだものを粘膜下層がん、さらに進んで筋層までおかしたものを筋層がん、胃の外面をおおう漿膜(腹膜)まで広がったものを漿膜がんと呼んでいます。

 このうち粘膜がんと粘膜下層がんはなおる率がきわめてよいので早期胃がんと呼ばれています。これとは逆に筋層がんと漿膜がんは手術後の治癒成績がそれほど良くないので進行胃がんといって区別しています。

 もちろん早期がんといっても、粘膜下層がんでは周囲のリンパ節にがん細胞が入り込んでいることがありますし、進行胃がんでは周囲のリンパ節だけでなく、胃の周囲にある網膜や腹膜をはじめ、肝臓、直腸、卵巣、肺などの臓器や、離れた場所にあるリンパ節などにもがん細胞が転移して不幸な結果を招く原因になることがあります。

 胃がんの死亡率は、日本が世界で一位を占め、日本人のがん死亡順位も男女とも一位になっています。なお、わが国でも地域によって胃がん死亡率には多少の違いがあり、米や飲料水、食習慣などが問題にされています。

 生活環境、ことに食習慣の違いと胃がん死亡率との関係は、ハワイの日系人の胃がん死亡率の調査成績によると、一世では日本人と大きな違いはありませんが、二世になると死亡率が減少し、米国白人と同じように、腸のがんと心臓病による死亡率が多くなっています。

 したがって、胃がんの発生には食生活が重大な影響を与えているのではないかと考えられています。

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 原因
 胃がんの原因については一般のがんと同様に、まだ決定的なものはありません。

 いろいろの発がん物質によって動物に胃がんをつくっていますが、食事の中のどのようなものが胃がんの原因となるのかまだ分かっていません。食習慣のうち、白米、塩魚、酒類などの多量摂取が関係しているようにも考えられますが、まだ決定的とはいえません。

 また胃がんが同一家系に頻発することもありますので、遺伝が関係しているのではないかとも考えられます。

 しかし胃がんに特有な遺伝因子があるのかどうか、また胃がんの遺伝様式はどうなっているのかについては不明です。

 胃がんが男性に多く、しかも50歳を過ぎると急に多くなることから、慢性的な刺激や個人的要素などの重視されています。

 前がん状態
 一般にがんの発生しやすい病気は、前がん状態として注目されていますが、胃がんの前がん状態としては、胃ポリープ、慢性胃潰瘍、悪性貧血などがあげられています。

 しかし、これらの病気から必ず胃がんが発生するというわけではありませんが、胃がんの多いわが国では、前がん状態と考えられるこれらの病気が発見されたならば、経過を追って診察を受けることが望ましいことです。

 症状
 胃がんが発生しても始めのうちはほとんど症状がありません。しかし、ある程度までがんが広がると、胃が痛んだり、むうっとして、食欲がなくなったり、胃が重苦しく感じたり、胃の不快な感じを訴えたりするようになります。

 がんがさらに進行すると、胃の痛みや胃の重苦しい感じはますますひどくなり、食欲もだんだんなくなり、やせてきて、はなはだしい場合には胃のはれものをふれるようになります。

 もし腹膜にがんが広がると、腹腔に水がたまって腹がふくれ、腹膜炎の症状を訴えます。また肝臓にがんが広がると、肝臓がはれて、食欲もなくなり、やせてきて疲れやすくなり、時には黄だんが起こったりします。

 胃がんの場合にがんの転移が最も起こりやすいのは腹膜ですが、肝臓やリンパ節にも転移の起こることがあります。また起こりやすい合併症としては、腹膜炎や肝臓がんのほかに、胃穿孔、胃出血、幽門狭窄、腸閉塞、それに貧血などがあげられます。

 胃がんの早期発見
 早期胃がんの大多数は無症状ですから、従来考えられていた胃がんの症状にとらわれていると早期発見はおろか、手遅れになることが少なくありませんから注意が必要です。

 胃がんは40歳を過ぎると500人に1人の割合で発見されるものですから、症状の有無にかかわらず、40歳過ぎの人では、少なくても1年に1回は定期的な検査を受ける必要があります。

 胃がんの早期発見に役立つ検査としては、X線検査、胃内視鏡検査、胃細胞診の三つがありますが、まずX線検査を受け、疑わしい変化があったならば胃内視鏡検査を受け、さらに胃細胞診を受けてください。これが胃がんを早期に発見するポイントです。

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 予防
 日本人の食生活のうちでは塩辛すぎるものをさけ、大量の飲酒をつつしみ、適当量の牛乳を飲むことは推奨されます。胃の具合がおかしいとか、食欲がなくなってきたとか、少しやせてきたといったような場合には、胃腸病専門の医師に相談して、適切な検査をしてもらうことが大切です。

 ことに胃がんが起こりやすい40歳以上の年齢の人や、家庭内に胃がんになった患者のいる場合などは、少しでも胃の具合の悪いときにはもちろん、症状がない場合でも専門医に相談すべきでしょう。

 ことに40歳以上の人は、1年に1回以上定期的に胃の検査を受けることが、胃がんの早期発見上最も大切なことです。また胃がんの前がん状態、たとえば胃ポリープや慢性胃潰瘍が発見されたならば、経過を追って検査を繰り返します。

 いずれにしても、無症状の早期胃がんを発見して、完全治癒をはかることが、現在のところ最も実際的な予防法であると考えられます。

 胃がんは症状のない胃粘膜がんの状態で発見されることが望ましいわけで、これには地域住民や事業所従業員を対象とした集団的な胃の検診を定期的に受けるか、また自発的に専門医の診察を定期的に受けることが必要です。