鉄欠乏性貧血

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 鉄は、血色素の主要な成分です。鉄が不足すると、血色素がじゅうぶんに合成されないので、赤血球は小さな、血色素の少ないものになってしまいます。これが鉄欠乏性貧血で、わが国に多い貧血です。

 そのうちで最も多いのは、本態性低色素性貧血ですが、そのほか、失血性貧血、鉤虫貧血、バンチ症候群、無胃性貧血などがります。このうち鉤虫貧血(十二指腸虫貧血)は、以前は鉄欠乏性貧血のうちで最も多いものでした。

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 原因
 鉄が不足する原因は鉄の摂取が少ない場合、鉄の吸収が悪い場合、鉄の消耗が大きい場合などです。妊娠中の母体が鉄不足のときには新生児にも、この貧血が見られることがあります。

 鉄の吸収が悪くなるのは消化管、特に胃腸疾患、胃の全摘出手術のあとにみられます。また、胃や十二指腸の潰瘍、痔出血、性器出血など出血が長期に続くときには鉄の喪失が増えます。

 このほか鉤虫症やバンチ症候群の時にも鉄欠乏症の貧血が起こります。

 女子では月経がはじまると、毎月血液を失います。血液100立方㌢㍍中には約45㎎の鉄が含まれていますから、男子に比べて鉄の損失は大きいわけです。

 それ以外でも女子は妊娠、分娩、授乳などで鉄を失う機会が多いものです。鉄欠乏性貧血のある人、あるいは貧血がなくても、体内の鉄分不足のある人が男性より女性にはるかに多い事は、これらのことから理解できることでしょう。

 本態性低色素性貧血は古くから萎黄病と呼ばれていたもので、男性にはまれで、20歳前後の女性に最も多いものです。若い女性で貧血があったら、まずこれを考えてよいでしょう。

 鉄剤でよくなおりますので、早く医師の診療を受けることが大切です。

 治療
 鉄欠乏性貧血には、鉄剤が良く効くので、急に大出血があって貧血が起こった場合以外は、輸血の必要はありません。

 鉄剤には内服薬と注射薬がありますが、ふつうは内服薬を用います。1日の服用量は鉄分150㍉㌘前後でじゅうぶんです。鉄剤は空腹時に飲むこともありますが胃腸障害を起こすこともありますので、多くの場合食事のすぐあとに服用します。

 胃液検査で無酸症や低酸症のあることが分かったら、塩酸リモナーデ、天然レモン汁、ビタミンCなどのいずれかを併用したほうが、鉄分の吸収が良くなりましょう。

 緑茶やコーヒーなどは鉄剤と同時に飲まなければ、きびしく制限する必要はありません。

 鉄療法によって貧血が回復しても、なお3~4週間ぐらいは内服を続けて、不足していた体内の貯蔵鉄をじゅうぶん補充しておく必要があります。

 吐き気が強いとか、胃潰瘍その他の原因で鉄剤の内服が困難な場合とか、慢性の下痢があって、内服しても鉄の吸収が悪い場合などは、鉄剤の注射が必要になりますが、慎重にやらないと危険です。

 鉄欠乏の原因がはっきりしている場合には、たとえば痔出血が続いていれば、痔の治療をやって出血を止めるというように、その原因を取り除く必要があるということは言うまでもありません。

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 療養と日常生活
 貧血があれば、ある程度の安静が必要です。鉄分は肉類、肝臓などの動物性食品に多く含まれています。また、ホウレンソウその他の緑色野菜にも含まれています。

 そこで、これらの食物を適量にとり、じゅうぶんに消化吸収できるように、消化機能を整えておく必要があります。鉄が欠乏しているときには、ほかの栄養素のバランスも崩れていることが多いので、一般的な栄養にもじゅうぶん注意します。

 また妊娠時から産後にかけて鉄剤を内服することはもちろん結構です。ことに妊娠時には鉄不足に陥ることを予防するばかりでなく、胎児にじゅうぶんな鉄分を補給する結果にもなるからです。