肺結核

 かつては、青年者の病気と考えられていた肺結核は現在では中年以上、特に高齢者の病気として無視できないものとなっています。

 肺結核は、結核患者のせきや会話の際に飛び散る結核菌が吸い込まれて移る慢性の伝染病です。慢性の伝染病であるため、感染から発病までに時間がかかり、また発病しても症状が少なく、進行が遅いということになります。そして、その間に人に移す危険があるので、やっかいな病気といえます。

 結核菌は、肺だけではなく、リンパ流や血流にのって全身に広がることがあります。このため、肺結核を治療しないでおくと、腎結核やカリエス、腸結核などの肺外結核が起こってきます。

 重症が多い
 高齢者の肺結核は特に重症例が多く、陳旧性のものが多いことから化学療法の効果がはっきりしない場合が多い傾向にあります。

 すなわち、空洞のある患者の中で、化学療法の効果の認められにくい厚い空洞壁のある例が占める割合は、60歳以上で初回診療群の30%、再治療群の約60%で、高齢者に最も高率なのです。

 古い病巣の再悪化
 50歳以上の患者の肺結核は再感染ではなく、大部分は肺気腫、慢性気管支炎など肺の変化、栄養障害、糖尿病など環境の変化により、古い病巣からの再悪化によると考えられています。

 病巣が両側性のことが多く、また合併症として肺性心、心不全、肺炎などがあり、病状の見通しは良くなく、直接死因として心疾患が約40%を占めています。

 治療は抗結核剤で菌が陰性化するのは若年者とそれほど差はないのですが、病巣の改善やその速度は、高齢者では不良であることがあげられます。

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 症状
 肺結核は、きわめて慢性に発病し、進行しますが、自覚症状は少ない病気です。

 一般症状
 やせる、微熱、寝汗、せき、たん、だるい、疲れるなどの症状は、病気がかなり進行しないと気づかないものです。しかし胸膜(肋膜)炎を起こしてくると、からせき、胸痛、熱などがはっきりと出てきますし、肺に空洞ができると、せき、たん、時には血たんや喀血なども起こります。

 また、全体としては慢性に進行していても、結核菌が空洞から肺のほかの部分に吸い込まれて、新しい病巣をつくるときに、かぜのような症状(せき、たん、熱)などがあらわれます。

 X線写真を写して見ると、新しい影がみられます。肺結核はよくこのような悪化のしかたをしますが、かぜと間違えられていることがよくあります。3週間以上、せき、たんがあるときは、X線写真を写すことです。

 結核の進展
 肺結核から肺外結核に進むと、当然それぞれの症状が出てきますが、化学療法時代になってからは、肺外結核は激減しました。

 肺外結核には、粟粒結核、髄膜炎、喉頭結核、腸結核など、致命的なものが多かったのですが、その脅威がなくなってくると、肺結核患者の寿命が大幅に伸びてきました。

 また、喀血も減ってきたので、治療しているかぎり、肺結核患者は、なおらないまでも長命を保つことができるようになりました。

 神経的症状
 結核患者の寿命が延びるに伴って、何年も長い間結核をわずらっていることから、病人はしだいに神経質になり、今度は発病当時とは逆に、自覚症状が増えてきます。

 病状とは不釣り合いに、食欲がない、眠れない、疲れる、だるい、顔がほてる、動悸がする、息が切れる、頭が重いなど、多彩な症状が出てきます。それでも思い切って職場に復帰すると、こういう病状は日増しに薄らいできます。

 年齢、症状と食事
 65歳以上の高齢者の食事は、成人の量より2割程度減らし、また女子は、男子の2割減とします。発育期の子どもの場合は、ほぼ成人に近い量にします。

 なお、高齢者には、高血圧症、糖尿病その他の合併症が多いので、その病気に応じて食事の内容も制限しなければならない場合があります。

 また、結核の初期には、化学療法の効果がよく発揮されますから、偏食をなくせばふつうの食事でも、若干強化すればさしつかえありません。

 しかし、初期の治療を中途半端にしていたために病状を悪化させた場合は、化学療法の効き目がよくないので、自然の治癒力をできるだけ働かせるために、からだの安静と同時に食事療法が何より重要になります。

 空洞の気管支が拡張した場合には、毎日多量のたんが出ますが、それによって多量のたんぱく質が失われますので、それを補給する(摂取量を1日30~40㌘増やす)必要があります。

 偏食は、病気治療の大きな障害になるものですから、できるだけ早く治さなければなりませんが、他方、食欲をそそり、おいしく食べられるように、調理をくふうする必要があります。

 それには、毎日の献立に工夫を凝らすとか、季節に応じて、たとえば、食欲が減退して胃の機能も不活発になる夏なには、さっぱりした食品を与える、などの心づかいが大切です。

 また、咀嚼をじゅうぶんにすることは、食事療法にあたっては大切なことであるので、食事の時には、じゅうぶんな時間(20分以上)をかけることが大切です。

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 肺結核に必要な栄養素
 実際に結核患者に接してみますと、食べ物に好き嫌いのある人が多いことに驚かされます。しかも、この人たちに多くは、牛乳が飲めない、肉も魚も好まないなど、動物性食品を食べないという共通点を持っています。

 このような偏食患者は、入院治療をはじめても、体重の増加がはかばかしくなく、また治療成績も著しくありません。

 必要な栄養素
 肺結核の食事療法の原則は、つまり、高たんぱく、高脂肪、高ビタミンの高カロリー食をとることです。

 カロリーは、成人男子の場合は、1日に2400~2600㌍が必要です。

 たんぱく質は、体細胞の主成分となるばかりでなく、免疫体をつくって病原菌の活力を防ぐ働きをしています。したがって、健康な人よりもやや多く、1日70~90㌘とるようにし、そのうち、3分の1ないし2分の1は、さかな、チーズ、牛乳、肉などの動物性食品から取ることが必要です。

 動物性たんぱく質には、成長、発育などに不可欠な各種の必須アミノ酸が多く含まれているからです。

 脂肪は、たんぱく質や糖質に比べて倍以上のカロリーを出すので、たいへん経済的な栄養素です。1日の適量は、60~100㌘ですが、できるだけ、バターや植物油などの良質の脂肪を取るようにします。

 なお動物性脂肪は、取り過ぎると動脈硬化を起こす恐れがありますので、高齢者の場合は、なるべく植物性の脂肪を取るようにします。

 糖質(主食など)は、体温と運動のエネルギー源となるもんのですが、結核患者には、あまり多くないほうがよく、1日350~380㌘が適量です。なお米飯はパンに比べるとカルシウムや脂肪、たんぱく質などが少ないので、あまり米飯にかたよらないようにします。

 各種のビタミンや無機質、特にカルシウムやリンは、結核の治療には欠くことのできないものです。

 ビタミンAは、細胞や組織に抵抗力をつけるとともに、脂肪の代謝に必要なものです。B1は、欠乏すると食欲が減退し、全身倦怠が起こります。Cは、不足すると病巣の治癒がはかばかしくないことが知られています。

 また、カルシウムは、白血球に活力を与えて、病巣に対する抵抗力をつけ、また、血液の凝固性を高めて出血を防ぎます。これらは、牛乳、チーズなどや果物、野菜などから取ります。