肺がん

 肺がんは、肺内に樹枝状に広がる気管支の壁の細胞からできるかたまりです。気管支壁の細胞が、がん細胞になると、急に分裂が増して、がんのかたまりが大きくまります。

 それが2~3㎝の大きさになるまでに、2~7年かかると考えれられていますが、そのころがん細胞はリンパ管を流れ、または肺の血管に入って広がり始めます。

 がん細胞がリンパ節に来ると、そこでまた増え、さらにその先のリンパ節へと広がります。この状態をリンパ節転移と呼んでいます。

 いっぽう、血液中に入ったがん細胞は全身を流れ、その多くは血液によって殺されますが、あるものは脳、骨、肝臓、腎臓など、肺から離れた臓器で増殖し、そこに植民地をつくります。

 これを血行性転移といい、おかされる範囲が広いほど全身の機能が衰え、ついには不幸な結果を招くわけです。この肺がんが大きくなる程度や、転移の広がる速度は、がんの性質によって様々です。

 一口に肺がんといってもかなり性格の違う三つの型があって、それぞれ顕微鏡で見分けることができます。

① 扁平上皮がん
 肺がんのうち38%を占め、たばこ喫煙と密接な因果関係があります。

② 腺がん
 女性に多いもので、36%を占めています。喫煙との関係は少ないと考えられています。

③ 未分化細胞がん
 肺がんの13.4%を占め、喫煙との関係は扁平上皮がんと同じく密接です。

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 原因
 がんの発生の原因は、まだ十分に分かってはいませんが、原因となる因子は一つではなく、二つあるいは三つの因子が重なってできるのだろうと考えられます。肺がんは、この理屈を説明するのに都合のよいがんです

 肺は、産声を上げてから息を引き取るまで呼吸を続けますから、長い年月の間に、外界からいろいろの物を吸いこみます。

 空気の汚れのひどい場所に住む人、職業的にチリの多い場所で働く人、たばこ喫煙を続ける人などは、気管支が長年の刺激を受けて細胞の形が変わります。

 これだけではがんになりませんが、その時の気管支の細胞の形はがん細胞に一歩近づいた形になります(上皮化生)。そのなかには、扁平上皮がんの混じるものも発見されていますので、大気汚染や職業汚染、あるいはたばこ喫煙が、肺がんの大きな因子になるものと考えられています。

 したがって、これらの三つの因子が重なる場合は、肺がん発生へのチャンスが多くなると考えても良いわけです。

 症状
 肺がんの症状のうちで、日常多くみられるものを順番にあげると、せき、血たん、胸痛、体重減少、発熱、呼吸困難などです。

 せき
 肺がんが小さくても気管支を刺激するために、初めから必ずありますが、タンが出ないので、風邪ぐらいに考えられて見逃されることが多い症状です。

 血たん
 がんは血管の多い組織であるうえにもろいので、咳をしたときに崩れて出血しやすいため、血たんを出す人がいます。

 胸痛
 がんは周囲の臓器、たとえば肋膜や胸壁に広がり神経を刺激することがあるので、肋間神経痛で発見されることが少なくありません。

 体重減少
 食事が取れて、ほかになんの症状もないのにやせが目立ってきます。

 発熱
 微熱のこともあり、38度以上の高熱が出ることもあります。

 呼吸困難
 肺がんがあると細菌が活動しやすい状態になるため、二次的に肺炎を起こし、呼吸困難を生じることが多いものですが、実際には肺がんそのものの症状ではありません。またがんで肺が広くおかされた時には息苦しさが目立ちます。

 その他の症状
 前述のほかに肺がんの症状は、できた場所によって特徴のある症状があらわれます。

 がんが肺尖にできた時には、腕の神経痛が起こったり、目の片方だけがくぼんだりします。またある時には、急に声がかすれて発声しにくくなる人もいます。

 これだけでは肺の症状と気づかず、五十肩と思われたり、目やのどの病気と考えられがちですが、その底には肺がんのあることを知らねばなりません。

 このほか、肺がんの進行した症状として強い疲労感、首の付け根にぐりぐりができる、肋膜に液がたまるなどの症状があらわれます。特別な症状として、男性の肺がん患者の乳房が大きくなる、手足の指の爪が太く大きくなる、女性ではひげが生えたり、腕や下肢が毛深くなりといったものもみられます。

 症状のあらわれ方
 以上のような肺がんにみられる多くの症状は、はじめはどれか一つによって始まります。

 たとえば、今まで元気であったのに、急にたんが出て血が混じったとか、風邪をひいた覚えもないものせきが断続して疲れやくなったとかです。このようなとき、すぐにX線検査をすれば早期発見ができるわけです。

 無症状のことも多い
 しかし肺がんは長い間、無症状でいるものが少なくありません。その理由としては、広い肺の中で細い気管支から発生した肺がんは、肺を刺激することなく静かに大きくなることができるからです。こういうものは定期健診を受けないと発見することができません。

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 診断
 肺がんの診断法には、X線診断、気管支鏡検査、気管支ファイバースコープ、気管支内病巣掻過法、細胞診などがあります。

 しかしどの人のもこのすべてをやるわけではなく、病状や病型によってX線診断だけで済むものもあり、精密検査をするものもあります。

 X線検査
 最も一般的で有力な診断法で、これだけで約85%が診断されます。これには胸の前後の写真、側面からの写真、断層写真、気管支造影、肺血管撮影などがありますが、一般にははじめの二つだけで十分診断することができます。

 気管支鏡検査
 X線診断を確かめるために行います。がんが太い気管支にあるときに、がんを直接見て組織を取り、顕微鏡で確実にがん細胞を診断することができます。ファイバースコープは、気管支鏡の精度を高めたものです。

 気管支内病巣掻過法
 肺は広いので、がんが肺の辺縁にできた時は症状もないし、ファイバースコープも入らないので診断がしにくいわけです。

 このようなときは、細い金属性のキュレット(耳かきのような器具)を細い気管に通し、がん組織を直接とる方法が行われます。これを気管支内掻過法といいます。

 たんの検査
 たんの出るときは、これを顕微鏡でみて細胞診することがありますが、前述の直接の方法に比べると診断率が劣ります。

 肺がんの診断はずいぶん進歩していますから、前述の症状があって、医師に相談すれば早期診断はむずかしくありません。しかし診断法には専門的なものがあるので、肺専門の医師にかかることをお勧めします。

 早期診断の必要性
 これまで肺がんを手術してなおる(5年以上健康で働ける)割合は、あまり良い成績ではありません。それは一般に、肺がんの知識が普及せず、医師を訪れる時期が遅かったためです。

 これを抜本的に良くするためには、定期健診で胸部X線に疑わしい影がある時、すぐに前述の確実診断をして手術を受けるということです。

 この早期手術を受けることによって治癒率は飛躍的に向上します。したがって、40歳を過ぎた人、特に男性は定期健診を年に2回受けていれば、たとえ肺がんになっても高い治癒率が期待できます。

 治療
 最近の肺がん治療法は非常に進歩し、これまでの治療成績はかなり改善されてきています。以前は外科手術だけで治療していたのが、今日ではそれに加えて放射線療法や化学療法(抗ガン剤)との合併治療が進歩したからです。

 その中でも最も効果を上げている方法は、胸壁に広がったがんに手術前に放射線をかける方法や、管を使って気管支動脈から抗がん剤を注入してがん組織を破壊し、そのあとを切除するという方法です。

 これらの治療の方法を、病状に応じて組み合わせたり、あるいは繰り返したりして、今までなおらなかったような進行がんの患者から治る人が増えています。